ほんの日記|2021年6月

(左奥が買った本、平置きは読んだ本)
仙台空襲関係の本をたくさん買った。新潟のBOOKS f3と北書店に行った。今月も買いすぎました。

◎読んだ本◎
『安田の唄の参ちゃん』『まんが 仙台空襲』『ホテルカクタス』『仙台空襲』『この島のひとたちは、ひとの話をきかない』『手の倫理』『お金の学校』『似合わない服』『ラディカル・オーラル・ヒストリー』『あの子は貴族』『いたこニーチェ』


6月3日(木)晴れ

昼休みにオムライスを食べながら、『安田の唄の参ちゃん』を読み始める。新潟水俣病のあった阿賀野市で、参治さんという人の人生を語り残したもの。方言のリズムが体に馴染むまですこし時間がかかった。
仕事帰りに図書館に寄って、仙台空襲関連の本を探す。『まんが 仙台空襲』をその場で読んだ。杜の都は一度空襲で焼け野原になりお世辞にも杜の都とは言えない土地になってしまったが、どうにか杜の都を取り戻そうと動いた人たちがいて、今の広瀬通や定禅寺通のグリーンベルトができたらしい。古い関連文献を2、3冊借りようと思っていろいろ探したが、手元に置いて付箋を貼ったりしながら読むのが常なので、結局ヤフオクで探すことに。『戦災復興余話』『七月十日は灰の町』『「終戦日記」を読む』など気づけば6冊も買ってしまった。
お風呂の中で『安田の唄の参ちゃん』の続きを読む。ひとりの人が生きた道のりをその人の語りで読むことができる。それは何だかとても嬉しいことだ。30分くらいでささっと上がろうと思っていたのに気づけば1時間以上経っていて、2時過ぎに寝た。

6月4日(金)雨

帰宅するとonreadingで注文した本が届いていた。『INSECTS』の書店特集、『ほんほん蒸気』など。杏子さんのさりげないメモがとても嬉しい。

6月5日(土)晴れ

涼しくて過ごしやすい。昼休みにベンチで『安田の唄の参ちゃん』を読み終えて胸がいっぱいになる。とっても良かった。参治さんという人の圧倒的な魅力。豊かな生の存在が立ち上がるほどにどうしても理不尽や怒りも浮かび上がるけど、そういうメッセージには終始しない、終始しようがないユーモアと豊かさ。
今日は燃えるような夕陽だった。

6月7日(月)晴れ

休日。萬葉堂で『仙台空襲の記録』という戦災手記集を見つけて購入。
むかしの市井の人の日記を読みたいと思う気持ちは何だろう。いろんなことを感じ考えながら生きていた人がこの場所にいたのだと知ること、その言葉の切実さに触れること。そういう体験を求めてしまうのは、歴史の浅い新興住宅地で育ったがゆえのような気がしている。もしかしたら数十年後、沿岸部の嵩上げされた新しい住宅地で育った誰かはわたしと同じような心許なさを抱くかもしれない。そんな時、かつてその土地で暮らした人の何てことない日記を読みたいと思うかもしれない、と思う。自分と同じ場所に立っていた誰かの言葉。
夜、『サン・ソレイユ』という映画を観た。最初から最後までずっと釘付けで圧倒されっぱなしだった。わかりそうでわからない、掴めそうで掴めない、自分とは似ても似つかない視点、好奇心の眼差し。語られる言葉の意味も完全には理解しようがなくて、理解できないから揺さぶられるし、引っかかり続けるし、何度観ても新鮮に感じる予感がする。なんか、すごいものを観てしまった。

6月8日(火)くもり

1週間が始まった。眠い。ラジオでオリンピックのニュースを聞いていたら、日本人の粘り強さとか​逆境に耐え抜く力とか美徳とかいう言葉が聞こえてきて、もはや諦めというか笑っちゃうような気持ちになったのだけど、その時ふとペストで読んだ一文を思い出した。(引用)
「戦争が勃発すると、人々は言う——『こいつは長くは続かないだろう、あまりにもばかげたことだから』。そしていかにも、戦争というものは確かにあまりにもばかげたことであるが、しかしそのことは、そいつが長続きする妨げにはならない。愚行は常にしつこく続けられるものであり……」

6月10日(木)晴れ

ずいぶん前にKさんが貸してくれた江國香織の『ホテルカクタス』を読む。人が出てこない小説。帽子ときゅうりと数字の2が、それぞれの個性的すぎる特性を包摂しながら展開していく優しい話。良い。

6月11日(金)晴れ

休日。熊野三社の企画展を見に名取市歴史民俗資料館へ。職員の方に「名取の歴史が網羅的に書かれている本などはありますか?」と聞いてみたところ、うーんあんまり、という歯切れの悪い返事のあと、『名取の伝説と造物』という本を見せてくれた。見た感じは古書の佇まいだけど、発行は平成10年と意外と新しい。スマホにメモをする。
資料館をあとにして、カフェで『仙台空襲』を読み始める。130人以上の市民の手記が束ねられた本で、冒頭は写真資料ページと、戦争における仙台空襲の位置づけや戦局についての俯瞰的な文章がある。空襲ってさほど大きくない地方都市にまで及んだのか。郡山、倉敷、甲府、鹿沼、平塚等々。どうしてこんなところまで、と思ってネットで検索してみたら、アメリカ兵によるこんな言葉に出会った。
「地方都市の爆撃は3日に1度の牛乳配達のような日常的なものだった」。(引用元
大都市への空襲が軒並み終わったためにあまり意味のない地方都市にも攻撃が及んだということらしい。ぜんぜん知らなかった。
帰りに萬葉堂に寄って『名取の伝説と造物』を探すも見つからず。ベテラン店員さんに尋ねるも、今は在庫がないとのこと。「あの本ね、何だろうね、この間入荷したらすぐ売れちゃって、そのあとまた別の人にも聞かれたんですよね」と。結構探してる人がいるらしい。しかし、萬葉堂になかったらどこにあるのだろう。ネットの海にもなさそう。『私にとっての戦争』と『語りつぐ「私の戦時体験」仙台空襲』を買う。ここにも空襲体験の手記が載っている。仙台でこんなにも多くの人が戦争の手記を残しているということに感動というか、本当に驚く。まだほとんど読めてはいないけど、数百人はいるのではないか。書き残そうとした人々の切実さとともに、それを束ねようとした人々の存在の大きさを思う。束ねる人がいなければ書かれなかった言葉がたくさんあるのだろうと想像する。
風呂の中で『仙台空襲』の手記を読む。ひとり目の手記から圧倒される。素晴らしいと言って良いものかわからないけど、ものすごく揺さぶられた。そんなだからひとつしか読めなかった。こんな調子でいつ読み終わるんだろうか。

6月13日(日)くもり

休日。チビたちが寝る前に絵本を6冊読んだ。何度も何度も読んでるノンタン、それでも読んで欲しいんだもん、それってすごいよなぁと思う。
風呂の中で『この島のひとたちは、ひとの話をきかない』を一気に読む。前にポルべニールブックストアの金野さんに教えてもらった本。面白くて、読みながらたくさん付箋を貼った。

6月14日(月)くもり

休日。イービーンズの古本まつりで『名取の伝説と造物』を探してみるもやはりなく、『千年の祈り』というクレストブックスの本を買った。風呂の中で『手の倫理』読み始める。付箋をたくさん貼る。
寝る前に映画『うたうひと』を観た。なんという豊かな語り、魅力的な表情。想像を超えてくる楽しい2時間だった。

6月15日(火)くもり

夜『アミラ・ハス』という映画を見た。パレスチナ問題を取材し続けるイスラエル人ジャーナリストのドキュメンタリー。ライブラリの新着資料の棚にあったので何となく借りてみたのだけど、軽い気持ちで観るものじゃなかった。でも、観て良かった。突然家や畑を壊され暮らしを奪われ、常に命の危険にさらされて、子供も容赦なく殺される。意味のない破壊。暴力が目的の破壊。想像を絶する理不尽の中でどうやったら正気を保っていられるだろうか。4時間もあるので途中までにしようと思ってたのに、結局最後まで観てしまった。

6月17日(木)くもり

どよーんとしている。元気になりたくて、風呂で坂口恭平『お金の学校』を読む。こういう時はごくごく読める文章がありがたい。一気に読み終えてちょっと元気になった。

6月18日(金)くもりのち雨

風呂の中で『似合わない服』を読む。乳がんになった編集者の体験と壮大な気付きが書かれていて、その気付きをどうにか書き留めておきたいという思いが伝わってきた。
でも、何と言ったらいいか、ご自身のがんの経験から導いたひとつの法則に照らして世界情勢や宗教観の争いにまで触れていることに危うさを感じる。複雑な問題をすべて地続きに語る姿勢に出合うと、うまく言葉にできないけど、うっ、と立ち止まってしまう。あらゆる問題の原因はすべてこれに通じるのだと、そう理解すればいろんなことがシンプルになってモヤモヤは消えるかもしれない。でもやっぱり、それはなんか違うような気がする。これはたぶん過去の自分への嫌悪でもある。もっと著者の方の実感の部分を読みたかった。文章は読みやすくて面白かった。

6月20日(日)晴れ

休日。朝7時半に広瀬通からバスに乗って、お昼前に新潟に着いた。往復9500円。コロナじゃなかったらもっと頻繁に行き来するのに。
今日の予定を何も決めずに来たので、ひとまずシネウィンドに行って、ちょうど上映が始まるところだった『春水紅暖』という映画を観た。美しい中国映画。時代のワンシーンを見たような感覚。良かった。そして何よりもシネウィンドで映画を観るということができて良かった。良心的で温度のある映画館。
Googleマップを見たら近くに信濃川があることがわかったので行ってみる。川辺にこんな芝生の斜面があって、街の真ん中に人がのんびり集える場所がある。それだけで新潟は良い街だなと思う。
目の前に見える萬代橋を渡り、宿へ向かう途中に店構えが素敵な喫茶店があったので入ってみる。マスターの動きに一切無駄がなくて見惚れる。みんなカウンターで静かに本を読んでいるので、わたしもカバンに入れてきた『ラディカル・オーラル・ヒストリー』を読み始める。難しい本だと思っていたけど口語体で読みやすい。
宿にチェックインしたあと、40分ほど歩いてBOOKS f3へ。小倉さんのいるf3に行く、それがこの旅の目的だ。お店がなくなってしまう実感がない。でも実感がないなんて言えるほどお店に通うこともできなくて、惜しむ権利もないよなと思う。『Settlements』という写真集、『きらめく拍手の声』『NIIGATA NATIVE NAVIGATE』など5冊を買って、閉店後に小倉さんとお酒を飲んだ。0時頃解散。宿に戻ったらなかっちゃんがもう布団で眠っていた。

6月21日(月)晴れ

旅館で目覚める。なかっちゃんと久々の再会。
チェックアウトして新潟の街を歩く。念願の北書店で『アトリエ雑記』『センチメンタルジャーニー』『父とゆうちゃん』を買う。佐藤さんとも話すことができた。
最後はふたりそろって再びf3へ。記念に小倉さんがチェキを3枚撮って、ひとり1枚ずつくれた。お店がなくなってしまうことについて感じたことを書きたいと思うけど、どうにもうまく言葉にできない。とりあえず今回わかったのは、わたしは小倉さんのことがとても好きだということだ。
バスの時間まで『NIIGATA NATIVE NAVIGATE』を読んで過ごす。18時半のバスに乗り23時前に仙台に着く。道中で石垣さんから連絡があって、バスを降りてから長電話をした。昨日今日でいろんな生き方に触れてぐらぐら揺さぶられる。

6月22日(火)くもりのち雨

旅から帰ってきて仕事。昨日の余韻を引きずりつつ仕事。今月は本に4万円も使ってしまいました。後悔はないとはいえ、意識的にお金を貯めなければ。好きな人・店・もののためにお金を使うことと、節約することを両立していきたい。

6月25日(金)晴れ

夜、『広島原爆 魂の撮影メモ 映画カメラマン 鈴木喜代治の記した広島』というDVDを見た。続けて『日曜日の散歩者 わすれられた台湾詩人たち』という映画も観たのだけど、シュルレアリスムの詩が全然わからなくて中盤で寝落ちしてしまった。

6月26日(土)雨のちくもり

ここ数日活力が湧かなくて、本を読む気にもならず湯船にも浸かってない。真面目な本は読める気がしないので何かエンタメ色の強い本をと思い、『あの子は貴族』を開く。読み始めたら止まらず3時すぎに読み終えた。ああ面白かった〜。

6月29日(火)雨

気楽な読書をしたくて『いたこニーチェ』を読んだ。さえないサラリーマンの元にニーチェが「いたこ」のごとく降臨する小説。いつ買ったんだっけ。これを読んでもニーチェやカントをわかることはなさそうだけど、ちゃんと知りたいという興味は湧いた。

6月30日(水)くもり

休憩中に『いたこニーチェ』を読み終える。難しいことを庶民にもわかるように噛み砕いていますよ〜という説教くささに包まれながらも、「理想によって現実を測るな」という言葉はじりじり響いた。面白かったけど、男の人が男の人のために書いた本だなぁという感じがした。

ゆり
元書店員、現在は文化施設の職員をしています。「ほんの日記」は、毎日書いている日記の中から読書記録などを抜き出したものです。