ほんの日記|2021年10月

(手前が読んだ本、左奥が買った本)

◎読んだ本◎
『みらいめがね2』『山の音』『遠野物語』『悲しみよこんにちは』『命売ります』『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?国会議員に聞いてみた』


10月2日(土)晴れ

休日。台風一過の晴天。いざ石巻一箱古本市へ。旧歓慶丸で受付をして、石巻商工信用組合の軒下に店を構える。運営の方々が素晴らしく、出店者にもお客さんにも配慮が行き届いている。すごくちゃんとしていて感動してしまう。5年前の自分と比べて何となく今更反省。
わりと絶え間なくお客さんが来てくれて、良いペースで本が売れた。14時過ぎにすこし落ち着いたのでほかのお店も見て回る。『アジアン・ジャパニーズ』、『往復書簡 限界から始まる』、とり・みき『山の音』などを買った。15時に店じまい。スリップを数えると、まどをあけるが11冊、山小屋日記が5冊売れたのを含めて計40冊も売れた。やったー。高速代とか出店料とかもろもろの経費分を回収できた。何よりも、久しぶりに対面で本を売るのがすっごく楽しかった。わたし、いろいろあったけどやっぱり本を売る仕事が本当に好きだったんです。誰に言うでもないけどそんなことを思う。
今日は、ともちゃんのポストカードを無料で配ったことがアイスブレイクになって本が売れた感じがあり、ともちゃんさまさまです。風が強かったから、もうちょっと風対策ができたら良かったかも。何にしても、今日は本当に楽しかった。

10月4日(月)晴れ

休憩中に『みらいめがね2』の続きを読む。ハンマー釘問題、すごくわかる……。

10月5日(火)くもり

かよちゃんから読書会をやろうと連絡があった。2ヶ月に1回くらい、同じ本をお互いに読んで感想を語り合う会。第1回目は10月末、課題本は『遠野物語』に決定。そういう、実は読んでなかった名著みたいなのを読む機会があるのってありがたいなぁ。
夜、YouTubeで新しい出版流通についての討論会を見た。

10月8日(金)くもり

何だか疲れていたので14時頃に仕事を早退し、お昼にナポリタンを食べながら『みらいめがね2』の続きを読んだ。「求められていない場合、アドバイスは罪である」という言葉、刺さる。

10月9日(土)くもりのち雨

休日。昼過ぎに母とともちゃんを誘って初めてのメアリーコリンへ。静かにカフェ利用をしている人の邪魔にならないように小さな声で話す。ともちゃんが欲しがったぐりとぐらのかるたと、お店の方に教えてもらった『わにわにのおふろ』を買う。わにわにシリーズ、シュールで好きだ。最近たいちゃんが恐竜好きなので、恐竜の絵本はありませんかと聞いてみたところ、『きょうりゅうオーディション』がおすすめだと教えてくださった(今日入荷予定でまだ棚にはなかった)。それをともちゃんに話したら幼稚園にはあるらしく、超面白いよと生き生き説明してくれた。自宅用なのにきれいにラッピングしてくれて、クラフト紙で包んだ上にかわいい紐がかけられていた。こういう時、参考になるなぁという感覚で写真を撮ってしまうのは、またいつかお店をやりたいからなのかなと思ったりもする。
寝る前に、小森さんから借りた『ぼくのなかの夜と朝』をようやく観た。鑑賞者としては素晴らしい映画だと感じてしまうけど、被差別者にカメラを向けることの暴力性や傲慢さからは逃げられないし、どんなに知識を得たって、歩み寄ったって、その課題は永遠にあるのだろうなと思う。そんなこともまっすぐに問いかけてくる、すごい映画だった。

10月10日(日)晴れ

『みらいめがね2』読み終えた。後半、身につまされるというか、ふだんの自分の言動にたくさん反省した。会話の中に自虐を盛り込んだり、コミュニケーションツールとして噂話をしてしまうことがある。後者は親しい人とはしないけど、知り合い程度の人との会話で安易に盛り上がろうとするときに言ってしまう気がする。人付き合いが浅いから、心の中で焦っているから、空虚な話をしてしまうことがある。コミュニケーションのあり方や人付き合いを見直したい。
夕食前に、一箱古本市で買ったとり・みき『山の音』を読んだ。

10月11日(月)晴れ

萬葉堂で『どもる体』とチェーホフの『馬のような名字』(ついに!)を買い、天然酵母のパン屋さんで買い物をした。歯医者の時間まで『遠野物語』を読んで時間をつぶす。文語体で読みにくいけど、慣れれば面白い。歯医者の帰りにブックオフに寄って三島由紀夫の『命売ります』を買う。柳田國男の『こども風土記』を探したけど売ってなかった。
山ドキュのオンライン上映を観たいと思いつつ、家族のいる家でご飯どきには観れないので、とりあえず作家さんたちのアフタートークだけは予約。

10月12日(火)

『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』が読みたくて、帰りにブックオフに寄るも見つからず。なんとなく『悲しみよこんにちは』を買って帰宅。
『遠野物語』読了。読みながら豊かな情景を思い浮かべる。遠野に行ってみたい。しかし、てっきり柳田國男が遠野を訪れて滞在しながら話を聞き歩いたのだと思い込んでいたが、遠野出身の佐々木氏から東京で聞き取りをした話をまとめたものと知り、結構驚いた。三島由紀夫が解説で、炭取の回る/回らないが小説たり得る条件になるということをひたすら論じていて面白かった。
寝る前に『悲しみよこんにちは』を読み始めたら、書き出しからあまりに美しくて衝撃を受ける。「ものうさと甘さとがつきまとって離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しい、りっぱな名をつけようか、私は迷う」もうここだけで名著という気がする。3分の1くらい読んで、続きは明日。

10月13日(水)雨

『悲しみよこんにちは』の続きを読む。アンヌの聡明さもエルザの粗雑な天真爛漫さも、声まで聞こえそうなくらいみずみずしく描かれる。思春期の心の機微の繊細さ、残酷さ、割り切れなさ、揺れ。本当に素晴らしい小説。寝る前に惜しい気持ちで読み終えた。

10月14日(木)くもり

三島由紀夫の『命売ります』を読み始める。三島由紀夫と言えばどうしても右翼、切腹のイメージが強くて敬遠していたのもあって、作品を読むのは初めてかもしれない。いろいろ読んでみたくなる。

10月15日(金)晴れのち雨

帰宅して『精神0』を観た。静かな映画だった。穏やかな先生の生活の手つき、所作から滲み出るものをじっくりと見る映画だった。これが観察映画なのか。『精神』も近々観てみよう。

10月16日(土)くもり

休日。家から一歩も出ず、朝から『命売ります』の続きを読む。ライトなエンタメ小説で読みやすい。午後から『ミッドサマー』を観た。美しくて怖い。でもあの服を着て踊るの楽しそうだな。『ニューヨーク公共図書館』も観始めたものの、途中で寝落ちしてしまった。

10月17日(日)晴れ

休日。ほぼ家から出ず、『時給はいつも最低賃金〜』を読み始める。夜は来週の濱口竜介さんの映画講座に向けて『牯嶺街少年殺人事件』を観た。押し入れに仕舞い込んでいたプロジェクターで壁に投影。やっぱり大画面で観るのはいい。前情報なしで観たので、中盤で起きた事件でタイトルは回収されたと思っていたからラストにかなり動揺した。何といっても登場人物がすごく魅力的だった。この世界は変えられないと諦観している小明に、ぼくが世界を照らして見せると理想を語る小四。大好きな作品になった。

10月18日(月)晴れ

最低気温6度。寒い。今日から冬が来た。信号待ちで前に並んでいた車が風もないのにぐらぐら揺れていて、よく見ると運転席の人がノリノリで踊っていた。『時給はいつも最低賃金〜』の続きを読む。わからないことだらけで、もっと政治のこと、経済のこと、勉強したいなと思う。

10月21日(木)晴れ

良い天気。仕事でくたくたになったが、帰宅して『ハッピーアワー』を観始める。ディスクが2枚に分かれているので今日は1枚目。すごく面白くてまったく飽きず、夢中で3時間観た。あっという間だった。早く続きが観たい。

10月22日(金)晴れのち雨

帰宅後『ハッピーアワー』の後半を観た。5時間以上もあるのに全然長く感じなかった。むしろもっと続いていてほしかった。登場人物の誰かが真実の代弁者になるわけでもなくて、みんな矛盾を抱えてて、共感できるようで分からなくて。そういうのが本当に、自分の日常と地続きにあるリアルな現実をそのままうつしとったみたいだ。すごいな。また大好きな映画が増えた。

10月23日(土)雨のち晴れ

期日前投票に行った。31日も20時までには間に合いそうではあるものの、ギリギリに投票すると、直後の報道を見ているときに自分の一票の影響を感じられない気がするから、開票速報を楽しむために期日前投票にした。初めて出口調査に答えた。NHK、共同通信、仙台放送の3社。NHKと仙台放送はタッチパネルの選択式で、共同通信は指差しで意思表示をする方式だった。

10月24日(日)晴れ

濱口竜介さんの映画講座に参加。『非情城市』を観る。奇跡的にあったという35ミリフィルムでの上映で、途中トラブルはあったものの、3時間少しも飽きずに観れた。とはいえストーリーはいまいち理解できず、「なんかすごいけどよくわからない」みたいな状態で、後半の映画講座に突入。そうしたら濱口さんがまず、ぼくも最初はよくわからなかった、一度で理解するのはほぼ無理だと思う、でもただ歴史を見たという感じがしたのは覚えている、という話をされて、その「歴史を見た」という感覚を細かく紐解いていくような話が続き、すごく面白かった。
音、言語、動きというさまざまな要素の複数性が重なり合っているという解説を聞きながら、昨日アシタノカレッジで砂鉄さんと東畑開人さんが話していた「ひとりの人間の中の複数性」の話を思い出していた。人の外にあるあらゆる複数性に加えて、人の内面の複数性も存在すると思ったらなんだかくらくらしてきて、想像力の拡張の無限性とその限界、みたいなことについて考えてしまった。

10月27日(水)晴れ

仕事終わりにフォーラムで『ミッドナイトトラベラー』を観た。アフガニスタンでドキュメンタリーを撮っていた映画監督が、タリバンから死刑宣告を受けてドイツに亡命するまでの道中をスマホで撮影した映画。観れて本当に良かった。圧倒的な非日常のなかにある家族の日常のやりとりみたいなものが映り込む。身の危険を常に感じつつも、劇的な展開よりはむしろ停滞と退屈みたいなものもリアルに描かれていて、なんというか、本当にすごかった。途中、この映画を快適な映画館で観ている自分に気づいたときに、妙な居心地の悪さを感じた。この映画の感想をちゃんと言語化できるようになるには、いまのわたしには他人の言葉が必要だ。何かに誘発されないと言葉が出てこない。うまく語れない。そんなことも肯定しつつ、いつか言語化できるようになりたい。

10月28日(木)晴れ

仕事帰りに萬葉堂に寄り、『トポフィリア』を探すも見つからず。ベテラン店員さんは忙しそうだった。ブックオフにも寄ったけど、今日は何も買わずに出た。
夜はかよちゃんと第一回読書会。課題図書は『遠野物語』で、わたしは文語体で読んだけどかよちゃんは口語体の本を読んでいたので、理解の度合いがだいぶ違っていた。掘り下げるのはなかなか難しいお題だったけど、これを機に読めたのはほんとうに良かった。次回の課題図書は伊藤亜紗さんの『手の倫理』に決定。最初の章だけ読んでそのままになっていたから、これを機に改めて読めるのがありがたい。

10月29日(金)くもり

休日。朝から歯医者。待ち時間で『時給はいつも最低賃金、これってわたしのせいですか?国会議員に聞いてみた』をやっと読み終えた。後半何度も泣きそうになってしまった。市民の代表として、和田さんほど最適な人はいないんじゃないだろうか。読者を置いてけぼりにしない配慮が徹底されていて、ちゃんと実感をともなう言葉のやりとりが続くから安心して読み進められた。これぞ対話だなぁ。救われる。読み終えて手持ち無沙汰になったので続いて想田和弘監督の『観察する男』を読み始める。このあいだ観た『精神0』が良かったので近々『精神』も見る予定。観察映画って面白いな。いつか撮ってみたいと思ってしまう。
夜、アマプラで『僕の姉ちゃん』という30分ドラマを全話一気見しながら、本棚の本にグラシン紙をかけた。読み終えた本にだけかけて、未読の本は読んだあとにかけることに。そうしたら積読がしっかり可視化されてしまい、おかげで読書欲が湧くという良い効果が得られそう(だといいのだが)。

10月31日(日)晴れ

帰宅して衆院選の開票特番を見る。「今回はどうなるかわからない」、そんな言葉を信じていたけど、わたしが投票した候補はみんな落ちた。注目していた香川1区は小川淳也さんが当選。もういっそ香川に戻ろうかという気持ちにすらなってくる。Twitterの雰囲気と現実は全然違う。普段関わっている人たちは野党支持の人ばかりだから、自民党に投票する人たちの実情をわたしは知らなすぎるんだと思う。世の中の実情ってどうやったら見えるんだろう。

ゆり
元書店員、現在は文化施設の職員をしています。「ほんの日記」は、毎日書いている日記の中から読書記録などを抜き出したものです。